視野角の改善 – 想像以上の選択肢
消費者向けテレビ市場では、製品差別化とユーザー体験の向上を目的に、薄型ディスプレイや広視野角の設計が進められてきました。これらの視野角改善は、現在、小型工業用ディスプレイ市場にも採用されつつあります。では、工業用ディスプレイの用途では、他にどのような改善策を取り入れることができるでしょうか。
まず、シンプルなTN TFTセル構造の視野角はおおよそ45~65度です(下図参照)。
図1. 標準TFTの視野角
従来のTNセルに 拡張ワイド偏光フィルム(EWP) を追加することで、各方向に約10~15度視野角を広げることが可能です。ただし、この場合、一部の方向では他の方向よりも狭くなる傾向があります。
もう一つの選択肢として Oフィルム強化偏光フィルム があります。これを使用すると、各方向で均等に視野角を75度まで広げることができます。
図2. Oフィルム装着TFTの視野角
さらに、高度なセル構造として IPS(In-Plane Switching) または MVA(Multi-Domain Vertical Alignment) セルを採用すると、各方向の視野角を約85度まで改善できます。
また、テレビ向けに開発された 量子ドット(Quantum Dot) 技術も応用可能です。量子ドットは視野角そのものの改善ではありませんが、色域を拡張し、全体の視覚体験を向上させる効果があります。
工業用アプリケーションの懸念と選択肢
消費者向け製品のライフサイクルは1~2年と短く、工業用途では10年以上の生産寿命が求められることが多いため、単純に消費者向けTFTプラットフォームを採用するのはリスクが高いです。特にIPSやMVAセルは消費者向けに設計されており、工業用途では早期に陳腐化する可能性があります。
設計上の懸念点:
- IPS/MVAセルは消費者市場向けが多く、陳腐化リスクが高い
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リードタイムやMOQ(最小発注量)が長く高い:IPSやMVAは一般的ではなく、需要が低い時期にはリードタイムが6か月、MOQも高額になることがあります
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コスト:複雑さと入手性の関係で、IPSやMVAはTNやTN+Oフィルムより高額
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フォームファクターの選択肢:TNは一般的でサイズや解像度のバリエーションが豊富で、Oフィルム追加も容易
したがって、工業用で10年以上の生産寿命を求める場合、入手性が高くコスト効率も良い TNセル+強化フィルム の組み合わせが、より現実的な選択肢となります。
主な適用分野
視野角性能改善が必要とされる製品には、特にコントラスト低下や色シフトを広角で防ぐ用途があります。
対象例:
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消費者向けテレビ
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自動車・工業用途の固定型LCD
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監視機器、安全機器
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固定AVシステム、ラックマウントシステム
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試験機器、医療機器
Oフィルムの登場により、視野角改善の選択肢は、TNセルにOフィルムを追加する方法 と IPS/MVAセルを採用する方法 の2つに集約されます。選択は、製品の入手性やコストパフォーマンスのトレードオフによって決まります。
図3. Oフィルム偏光フィルム視野角比較
結論
最終製品の用途で広視野角が求められる場合、選択肢はいくつかあります。
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コストパフォーマンスとのトレードオフ
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製品の入手性
例えば、設計上、広視野角の2.4インチQVGA TFTが必要で、TNセルしか選択肢がない場合、Oフィルムの採用が最適です。
同じディスプレイがIPSでも入手可能であれば、コストパフォーマンスや短い製品ライフサイクル、リードタイムの長さなどを考慮して、TN+Oフィルムとの比較検討が必要になります。





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